仮想部室

前監督のメッセージ

 

こんにちは、1991年から2015年まで監督を務めました前監督の上田誠です。

監督は森林貴彦君になりましたが、塾高野球部に携わる一人として一言申し上げます。

まず、皆さんにお伝えしたいのは、慶應義塾高校野球部の輝かしい歴史です。わが野球部は創設以来120年近い伝統を誇ります。前身の慶應義塾普通部は第2回全国中等学校野球大会で優勝、また第6回大会でも準優勝しています。また、もう一つの源流の慶應義塾商工も甲子園の舞台に何度も立ちました(詳しくは「沿革」の頁を参照)。戦後、学校教育法制定による学制改革に伴い、この二校と大学予科を再編して開設されたのが慶應義塾高等学校です。1949年には校舎を三田から日吉に移しました。

受験戦争の影響からか1962年以降ながらく甲子園から遠ざかっていましたが、2005年の第77回選抜高校野球大会で実に43年ぶりに甲子園に登場、ベスト8まで進みました。このように慶應義塾高校野球部は、2008年春から2009年春までの3季連続を含み、夏17回、春8回の甲子園出場を誇る伝統校なのです。

つぎに現在の部のことを少しご紹介します。

近年、野球部員は3学年あわせて約120名くらいです。部員たちは学年にとらわれず、「エンジョイ・ベースボール」を合言葉に、伸び伸びと野球をしています。古い上下関係や慣習にとらわれず、ふだんは和気あいあいとしていますが、野球に関しては決して妥協することをしません。私自身のことを言わせていただけば、アメリカはUCLA大学野球部でのコーチ留学を契機に、野球発祥の地であるアメリカ野球を手本に、それに日本野球の長所を加えて、高校野球に新風を送り込みたいと考えるようになりました。ですから、自分はもちろん、練習はつねに進取の気概を忘れず、各自が創意工夫するよう指導してきました。自主的に練習に取り組むことなくして野球を楽しむことはできないと思うからです。これは森林新監督にも継承されています。

わが野球部には様々な経歴の者が集まっています。普通部、中等部といった慶應義塾一貫校から進学してきた者、入学試験を突破してきた者、帰国子女枠で入学した者、推薦入試を突破してきた者など様々です。推薦入試に関しては誤解されている方もおられますが、本校の推薦入試制度はいわゆるスポーツ推薦ではありません(詳しくは「受験生へ」を参照)。これは中学時代に自分の得意とする分野で輝かしい成績をあげた、学業成績の優秀な者が入学を許される制度です。ですから、選抜方法が異なるだけで、入学後の特典はなにもありません。

野球に関しても各自のバックグランドは多様です。軟式出身者もいれば硬式経験者もいます。いろいろな事情から中学時代に野球がやれなかった初心者もいます。練習は決して甘くはないですが、なにより大切なのはヤル気だと考え、広く門戸を開いています。

このように塾高野球部には野球を愛するいろいろな者が集まっています。そのなかで、監督の役割はいわばSkipper(船長)で、部長、副部長、学生コーチなど他の乗組員と力を合わせ「新世界」を求めて航海を続けなくてはなりません。その旅にあって、甲子園は重要な寄港地ですが、さらにその先にあるものを野球を通じて追い求めていきたいと思っています。これが私の考える慶應義塾の野球です。私も乗組員の一人として全力で監督をサポートしていきたと思います。皆さんがこの考えに共鳴して、当野球部を応援してくださるならば、嬉しいかぎりです。